Chapter 4
”未来”を作る “今”の私たち
ツタエル
ジオパークでは、自分たちが暮らしている地域の風景や自然、文化を“守る”ことを大事にしています。
そのためには、この地に暮らす人たちや、この地を訪れる人たちに、私たちの豊かな暮らしを支える大地の壮大な物語や、その尊さを“ツタエル”ことが大切です。
ここでは、私たちの暮らしの当たり前を支える資源の未来と、子どもたちの学びの様子を紹介します。
暮らしを支える地質資源
現代の必需品ともいえるスマートフォン。片手に収まるその端末の中には、1,000を超えるパーツが詰め込まれており、さらにそこには金やプラチナなどの希少金属とプラスチックが使われています。スマートフォン1台を作るためには、多くの地質資源やエネルギー、労働力が消費されています。
日本における資源の状況も過去と今では大きく異なります。佐渡(新潟県)の金銀山は、江戸時代から約390年間も操業され、閉山までに金78トン、銀2,330トンもの産出量がありました。量と質ともに国内随一を誇り、大量に生産された金や銀は貨幣として利用され、国の財政を大きく支えました。
私たちの暮らしを支える地質資源を地球が生み出すには途方もない時間がかかります。私たちがモノを買うときに、本当に必要かどうか、違法な手段で採掘・流通したものでないかを考えることは、限りある地質資源を“守る” 大きな一歩です。
大地が育む食文化
日本には、多様で独特な食文化があります。日本の食文化は、豊かな海の幸や山の幸に支えられ、これら食材は、地球の活動が生み出した、多様な自然環境によって育まれています。
日本食に欠かせないお米を育てるには、平らな土地と豊富な水が必要です。稲作が伝来して以来、私たちの先祖は扇状地や地すべり地形などの自然にできた平らな土地を水田として活用してきました。また、対馬海流や黒潮がもたらす多雨多湿な気候も稲作には欠かせません。稲作に適した気候も日本が島国になったからこそ得られた恵みの1つといえます。
日本の周りの海流や海底地形は、豊かな海産物も育んでいます。高知県の室戸や土佐清水では、黒潮による湧昇流が栄養豊富な深層水を海面付近まで運び、カツオやサバなどの良い漁場となります。山陰海岸や糸魚川(新潟県)では、海岸から深海域までが近いため、水深500~2,500mに生息するベニズワイガニなどの深海にすむ海産物が新鮮な状態で水揚げされます。
大地の条件に応じて全く異なる特徴をもつ食文化は、地球の営みと私たちの暮らしとのつながりを“伝える” 役割を担っています。
未来の担い手に伝える
地域の資源や文化を“守る” ためには、この地に暮らす人たちや、この地を訪れる人たちに、“伝える” 活動が大切です。
この活動を持続的なものにするためには、未来の担い手の育成は欠かせません。ジオパーク地域では、身近な風景を通して見られる地球の営みを学び、生物・文化とのつながりを知ることで、地域への誇りと愛情を造成することを大切にしています。
各ジオパーク地域では、総合学習などのカリキュラムにジオパーク学習を取り入れた学習が活性化しています。未来の担い手となる子どもたちは、課題発見・解決型の学習に取り組むなかで、地域資源の保全と活用のバランスを考えています。
その際、幼稚園から高校まで、発達段階に応じてジオパーク学習を取り入れる、「保高連携」を目指しています。また、国内外のジオパークネットワークを活かして、他地域の子どもたちとの交流も盛んに行われています。身近にあるローカルなものから、グローバルなコトを考える楽しさや大切さを未来の担い手に伝えています。