Chapter 2
目の前の景色を作るいろいろな石たち
カラフル
みなさんは、目の前にある山が「どんな石(岩石)」でできているのかを考えたことがありますか?
特殊な顕微鏡でのぞいた“カラフル”な世界、どこまでも続きそうなしま模様は、地球が生み出した“アート”作品です。
様々な種類の「鉱物」が集まった、様々な種類の「岩石」が、目の前にある様々な“風景”を作っています。
ミクロな世界に地球の歴史?
岩石と鉱物の関係はおにぎりに似ています。岩石(おにぎり)は、鉱物(米粒や具のひとつひとつ)が寄せ集まってできています。
地球上には4,000種以上もの鉱物が見つかっており、それぞれ形や光の通し方など様々な特徴を持っています。2023年に北海道で発見された新鉱物「北海道石」は、ブラックライトで照らすと黄色やオレンジに発光します。世界中では、今でも毎年新しい鉱物が発見されています。
鉱物を調べると、できた時代や環境などが分かることがあります。富山県から産出した花崗岩には、0.1mmほどのジルコンという鉱物が含まれています。ジルコンは、岩石の年代を調べるのに役立つ鉱物の1つです。富山県の花崗岩に含まれるジルコンからは、38億年前という年代が報告され、これは国内最古の値です。このジルコンは花崗岩になる前のマグマに取り込まれた砂粒の1つだと考えられています。
岩石のミクロな世界には、地球の歴史が閉じ込められているのです。
石の生まれる場所
岩石や鉱物には、大きく分けて3種類の生まれる場所があります。1つ目の場所は、火山です。火山の地下にあるマグマや吹き出した溶岩などは、冷え固まって岩石(火成岩)となります。地下深くにあるマグマはゆっくりと冷え固まるので、鉱物が大きく成長した火成岩(深成岩)となります。一方、地表付近にあるマグマや吹き出した溶岩は、急に冷え固まるので、小さい鉱物が集まった火成岩(火山岩)となります。鉱物の種類や大きさを観察すると、マグマの性質や冷え方が分かります。
2つ目の場所は、海や湖、川などの底です。海底などにたまった砂や泥、生物の死がいなどは、長い年月をかけて岩石(堆積岩)となります。そのため、堆積岩には生物の死がいなどが化石として含まれていることがあります。化石を調べることで、その岩石ができた時代や、当時の環境を推測することができます。
3つ目の場所は、地下の深いところです。地球は地下にいくほど熱く、周りから押される力も大きくなります。そのため、地下にある岩石が変化して違う岩石(変成岩)となります。変成岩を調べることで、直接見ることができない地球の内部を推測することができます。
地球が作るアート作品
様々なでき方や生い立ちを記録する岩石は、地球が作り出したアート作品として私たちを楽しませてくれます。
島根半島(島根県)や男鹿半島(秋田県)などでみられる、砂岩泥岩互層(堆積岩)は、「鬼の洗濯板」とも呼ばれています。白い砂岩と黒い泥岩が交互に積み重なるこの地層は、日本海形成のころ、繰り返し起こった地震によって、海底へ運ばれた大量の土砂が堆積したものです。日本海の地下にある砂岩泥岩互層には、石油の原料となる原油が含まれており、国内産の原油の多くは、新潟県や秋田県の沖合から産出しています。
柱状の模様が特徴的な玄武洞(兵庫県)は、中国神話の「玄武(蛇と亀が合体した神様)」にちなんで名付けられました。マグマが冷却するときにできる割れ目「柱状節理」が規則正しく刻まれることで、このような模様ができました。観光地として有名な玄武洞ですが、世界で初めて地球磁場の逆転現象(地球のN極とS極が入れ替わること)が研究された場所でもあります。