Chapter 3 "日本"を形作った地球の物語"
ツクル
南北に細長く、逆「く」の字のような形をした、たくさんの島々からなる日本列島。私たちにとって馴染み深い日本列島の形は、昔から同じ形をしていたのでしょうか?
答えは「いいえ」。
日本列島が誕生し始めたのは、46億年という長い地球の歴史の中では、ごく最近の数千万年前。ここでは、日本列島を“ツクル”地球の物語をご紹介します。
大陸の記憶
約46億年前に誕生した地球の表面は、大地の変動や気候の変化によって、その姿を変化させ続けてきました。私たちにとって日本が島国なのは当たり前のことですが、長い地球の歴史において、日本列島が誕生したのはつい最近の出来事です。日本列島になる大地の一部は、もともと大陸の縁にありました。
大陸の縁では、海のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでいました。プレートの沈み込み帯では、海底にあった堆積物などの一部が、陸のプレートにはぎ取られます。このようにして陸のプレートに付け加わったものを「付加体」といいます。
また、陸のプレートの地下では大量のマグマが冷え固まり深成岩(火成岩の一種)が作られました。今の日本列島の土台の多くは、この時代の付加体と深成岩からできています。この頃の海にはアンモナイトが泳いでおり、大陸の上には恐竜がいました。
日本海拡大と日本列島の形成約7,000万年前
日本列島の誕生
日本海拡大と日本列島の形成
約2,500 万年前
日本列島が誕生するきっかけとなったのは、約2,600万年前にはじまった大陸縁部での活発な火山活動です。これによって大陸から陸地の一部が切り離され、日本列島の原型が誕生しました。また、大地の裂け目に水が溜まって湖ができ、さらに拡大して日本海が誕生しました。
日本海の海底火山からは、大量の溶岩や火山灰が噴出しました。男鹿半島や山陰海岸などに広く分布するグリーンタフは、この時代の活発な海底火山の痕跡です。グリーンタフという言葉は、中国地方から北海道にまたがる、日本列島形成期の火砕岩分布域の総称としても用いられます。日本列島を“つくる” 共通の証拠が全国各地に残されていることを意味します。
また、今の関東・甲信越には、日本海と太平洋をつなぐ海峡があったと考えられています。この海峡のことをフォッサマグナ(ラテン語で“大きな溝”の意)といい、秩父(埼玉県)や下仁田(群馬県)は、当時の海の痕跡が残されています。
変わり続ける日本列島
変動帯に位置する日本では、今もなお活発に大地が動いています。地球上で発生する火山活動や地震活動のおよそ10%が日本周辺で発生しているといわれるほどです。
日々、火山噴火や地震が起こると、地面は高くなったり低くなったりします。また、雨風や波は少しづつ地面を削っていきます。時間を早回しすると、目の前の景色は目まぐるしく変わり続けています。
ときに火山の噴火や地震を引き起こす大地の変動は、同時に恵みも私たちに与えてくれています。例えば、雲仙・普賢岳(長崎県)では、1990年から1995年までの噴火活動によって「平成新山」と名付けられた新たな山が誕生し、土石流によって多くの人命と生活が奪われました。その一方で「雲仙地獄」に代表される温泉や地熱資源、名物である手延べそうめんに欠かせない良質な水と肥沃な大地をもたらしてくれた一面もあります。
ヒトがこの変動帯に移り住み、厳しい自然条件にも呼応したからこそ、日本に住む私たちの暮らしや文化も“つくる”ことができたといえます。
日本海拡大と日本列島の形成
約1万8,000年前